おじいちゃんの時計

僕はおじいちゃんの事をよく知らない。おじいちゃんは、何十年も前に戦争で亡くなったからだ。

一昨年亡くなったおばあちゃんからも、今年3月に亡くなった父からも、あまりおじいちゃんの事は聞いてこなかった。

今思えば、おばあちゃんやお父さんが生きている内に、おじいちゃんの事をもっとよく聞いておけば良かったと少し後悔している。

おじいちゃんは、第二次世界大戦の最中、フィリピンのルソン島で戦死したらしい。名前は邦夫。
お父さんは長男で、戦地に向かう最期の時には物心もついていた為、おじいちゃん生前の記憶は少しあったらしい。

おじいちゃんは、フィリピンで亡くなる前に中国大連の旅順にもきていたらしい。
僕の嫁さんは、中国大連の出身なので、その話を聞いた時は、会った事もないおじいちゃんの事なのに、何故か涙が止まらなかった。おじいちゃんが僕ら夫婦を導いてくれたと感じたからだ。


今日、僕の兄が病院へお見舞いに来てくれた。
会う前までは、気分がかなり落ち込んでいたけれど、会って話を色々と聞いてくれて気持ちがとても軽くなった。

そして兄は、この一枚の腕時計の写真を見せてくれた。
戦争で亡くなったおじいちゃんがつけていた時計らしい。
今は私の父の弟(つまり叔父さん)が、この時計を持っているらしいのだが、今もなおゼンマイ式でちゃんと動作しているらしい。

会った事がないおじいちゃん。だけど、昔大連にも来ていた事や、この動き続けている時計を見ると、おじいちゃんと僕との繋がり(運命)を感じて、心が熱くなる。

生きている事、生きる存在価値、死んでもなお周囲に記憶として残る理由、そして血の繋がり。。。
この一枚の写真で、また色々と人生を考え直す良いきっかけとなった。

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